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試行錯誤を繰り返し、昨年よりも収穫量は増加傾向に:兼業農家(サツマイモ)農家・山崎さん

鹿児島県枕崎市でサツマイモを栽培し、焼酎メーカーへ納品しているサツマイモ農家の山崎さん。

前回、栽培シーズンが始まる前にお話をうかがった際には、「できる限りの対策のなかで試行錯誤するしかない」とお話されていました。

2023年のサツマイモ基腐病の発生状況はどうなっているのでしょうか。あらためて今年のサツマイモについてお話をうかがいました。


(取材時期:2023年9月下旬)





2023年前半のサツマイモ収穫状況

「天候がそれほど悪くなかったこともあり、今年はいまのところ順調です」と、サツマイモ農家の山崎さんは話してくれました。2023年は雨も比較的少なく、猛暑による気温の上昇も心配されましたが、山崎さんによればサツマイモ基腐病の影響はそれほど大きくはないとのこと。


「基腐病がまったく出ていないわけではないのですが、以前のように畑一面に広がっている感じではなく、発生した地点で留まっている印象があります。」(山崎さん)


サツマイモ基腐病についての対策として今年から新しく始めたことはないと山崎さんは言います。とはいっても、特別なことをしていないだけであって、基本的な対策は当然実施しています。


周囲の農家や酒造メーカーなどとも情報交換をしている山崎さん。それぞれの生産者がどのくらいの対策をするかは人によって変わってきます。種芋を熱によって殺菌する蒸熱処理をしたり、病原菌のいないバイオ苗を使ったりといった圃場に病気を「持ち込まない」ための対策はほとんどの農家さんが行っています。


サツマイモの生育を助けるため、土壌改良には力を入れて取り組んだそうです。優良微生物を土壌に繁殖させることで、土壌のバランスを改善させる取り組みで、この3年ほど掛けて行ってきたことで効果がだんだんと現れてきています。


また、今年は例年よりも苗の成長がよかったため、圃場への植え付け時期もすこし早めたとのこと。その分、生育日数も確保できたようです。

資材の散布にはドローンを使うこともあります。機械を背負って畑に入ると、サツマイモのツルなどを踏んで傷をつけるおそれもあるため、病気のリスクを抑える意味でもドローン散布は有効なのです。


病気や天候とのいたちごっこ

天候や土壌改善の効果もあり、今年の前半戦の反収(面積当たりの収穫量)は昨年よりも増える見込みです。「多い畑では反収2.5トンほど、平均的にも2トンくらいにはなりそうです」と山崎さんは話してくれました。しかし、この好調な収穫量が今年の最後まで続くかどうかは不安があるといいます。


「2022年についても、9月18日の台風が来るまでは順調に収穫できていたんです。それが、あの台風によって基腐病も急に広がりました。台風が来ると、雨と風で菌糸が飛散するので感染が広がりやすくなります。葉や茎に傷もつきやすいので、そこから菌が入り易いという影響もあります」(山崎さん)


大型台風やゲリラ豪雨のような天候被害はいつ起こるかわかりません。大雨になればどうしても基腐病の被害は広がりやすくなりますし、他の病気についても同様です。サツマイモ栽培に影響を与える要素はいくつもあり、すべてに完璧に対応するのは簡単なことではありません。


「今年は軟腐病(なんぷびょう)が多く出ています。軟腐病は、種芋の蒸熱処理をしても効果がありません。収穫するまでは病気に気付きにくいという特徴もあります。基腐病は出ていなくても軟腐病が出てしまっている圃場も出ています。」(山崎さん)


サツマイモ基腐病については、病原菌を「持ち込まない、増やさない、残さない」という対策スローガンが掲げられていますが、「残さない」ことは大変だといいます。


サツマイモ基腐病の対策では、収穫後のツルや茎などの残渣を圃場に残さないことが重要だとされています。残渣に寄生した病原菌がそのまま土壌に残ってしまうリスクがあるからです。しかし広大な畑を所有し、日々収穫に追われ続ける為あまり現実的な提案ではないのです。山崎さんはそれでも可能な限り対応し、耕運の回数も増やすなどの対策を重ねているそうです。


新品種「みちしずく」の導入で生産事情は変わるのか

焼酎の原料となるサツマイモの品種「コガネセンガン」は、特にサツマイモ基腐病の影響を受けやすく被害が広がっています。根本的な対策のひとつとして、基腐病に強い品種である「みちしずく」が誕生しました。


山崎さんの圃場でも「みちしずく」の栽培を始めています。今年はまだ種芋が少なかったため、それほど広範囲に植えているわけではありません。本格的な栽培は来年以降になりそうです。


「みちしずく」を原料にした芋焼酎の醸造も始まっています。ただ、試験醸造でつくられた焼酎と販売用の実機で醸造された焼酎とは、まったく同じ風味になるわけではないため、実際につくってみないと焼酎の原料としてどのくらい優れているのか未知数の部分もあるようです。


サツマイモ基腐病の影響が比較的少ない上半期に「コガネセンガン」を栽培し、下半期には基腐病に強い「みちしずく」を栽培するというような分担が今後は増えていくのかもしれません。天候や感染症など不確定要素の多いサツマイモ栽培ですが、安定した収穫を目指してさまざまな試行錯誤を続けています。



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