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「サツマイモ基腐病の影響で収穫量が最盛期の3分の1に」兼業農家(サツマイモ)農家・山崎さん

更新日:2023年5月17日

鹿児島県枕崎市でサツマイモの栽培農家を行っているを営む山崎さん。主に焼酎の原料となる品種「コガネセンガン」を栽培し、焼酎メーカーへ納品しています。


それまで大きな病気がなかったサツマイモの様子に異変を感じたのは「2018年の夏ごろだった」といいます。




病原菌を残さないことが肝心だが現実的ではない

——サツマイモ基腐病が発症しはじめた頃の状況を教えてください。


当初は、サツマイモの葉やツルが枯れる現象が見られました。いま振り返ってみると、畑の中でも高度が低く水が溜まりやすい場所でよりサツマイモ基腐病が発生していたと思います。それから次第に病気は広がり、悪化の一途を辿っています。


同じくサツマイモ農家の親戚や、収穫場で会う他の農家さんと話すなかで、皆さんも異変を感じているということを知りました。私自身も調べながら、ようやく関係機関が動き出して、この病気がサツマイモ基腐病であることが判明しました。


サツマイモ基腐病の発症を確認してから、毎年収穫量が減少し続け、以前は最盛期に3トン程度収穫できていたのに対し、病気が最も悪化した2020年には同じ面積でわずか1トンほどしか収穫できない状態でした。


収量の減少は売上にも直接的な影響を与えるので、経済的な負担が増しています。赤字にならないように努力していますが、基腐病対策に関する農薬や生産資材などで費用が嵩み、厳しい状況が続いています。現状として病気への対策も限られるなかで、試行錯誤を繰り返すしかありません。


—— サツマイモ基腐病が厄介に感じるのはどんなところですか。


鹿児島県では、病原菌を「持ち込まない、増やさない、残さない」というスローガンを掲げ、サツマイモ基腐病を拡大させないための取り組みが行われています。このうち「持ち込まない」については、無菌状態で栽培されたバイオ苗を使用することで、ある程度の効果が期待できます。しかし、「残さない」については解決が難しく、特に厄介だと感じています。


その理由は、病原菌はサツマイモの葉やツル、屑イモつるや葉、クズイモなどの残渣に寄生し、畑に長期間残り続けます。畑からこれらの残渣をすべて取り除いてしまえば病気のリスクを減らすことができるかもしれません。しかしながら作業上の観点からそれは難しく、どうしても畑に残渣が残ってしまいます。


また、この数年の経験から、サツマイモ基腐病の発症が天候に大きく左右されるということがわかりました。例えば、2022年度は雨が少なく、台風による被害も最小限であったため、その年の病気の被害は比較的少なかったと感じます。逆に、雨が多い年や台風の影響が大きい年は、病気の被害が拡大する可能性が高いと言えます。


さらに、収穫時期が遅くなるほど、病気の被害が高くなる傾向にあるため、早く植えて早く収穫することで被害を最小限に抑えるなど対策を行っています。しかし、植え付けや収穫のタイミングを調整することは、天候や労働力の問題など、さまざまな要因が絡んでくるため、必ずしも簡単にはいきません。



できる限りの対策のなかで試行錯誤するしかない

——サツマイモ基腐病が発症してからどういった対策に取り組みましたか。


最も効果的な対策は、畑の排水性の改善です。基腐病の胞子は水を媒介して移動することで、病気が広がります。よって水が溜まらないように排水性が高まるような工夫を行っています。


また、苗づくりにおいても病気に侵されていない種イモを使用することも大切です。他には、バイオ苗を利用するほか、種芋を高温状態にして殺菌する「蒸熱処理」を行うなど、罹病していない健全な苗作りにも取り組んでいます。


さらに、土壌改善にも力を入れています。これは微生物資材を使用することで、土壌に病原菌に対抗する微生物を繁殖させ、土壌のバランスを改善する取り組みです。一昨年から取り組んでいますが、昨年は少しずつ効果が現れ始めていました。今年は、土壌消毒も行う予定ですが、微生物が死滅しないように注意し、消毒を済ませてから資材を投入する予定です。


これらの対策も、畑の状況や天候条件によって効果の出方が変わりますので、どの要素がどのように影響しているかを理解するために、実際に試行錯誤しながら取り組んでいます。


ただ、私たちができる限りの対策を講じても、それには限界があります。とにかく現在分かっている対策を一つずつ試していくことが大切です。病気を安全に防ぐ方法が見つかるまで、このような状況が続くことも覚悟しなければなりません。


——関係機関に取り組んでほしい対策などはありますか。


農家としては基腐病に弱いコガネセンガンではなく、耐性のある品種に変えたいというのが本音で、実際に品種を変える農家さんもいます。


今年は私の畑でも、基腐病に強い「みちしずく」という品種の栽培にも取り組む予定です。試験場では強い品種ということがわかっていますが、実際のところは栽培してみないとわかりません。


また、サツマイモそのものの栽培をやめたり、高齢な方は離農される方も出てきており、被害の深刻さがうかがえます。納品先となる焼酎メーカーには、コガネセンガン以外の品種も受け入れて、新たな品種での焼酎製造も合わせて検討してほしいところです。


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