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基腐病を乗り越え、新たな焼酎づくりへ――小鹿農業生産組合が語る未来への挑戦

  • 執筆者の写真: R S
    R S
  • 5月1日
  • 読了時間: 3分

近年、鹿児島県を中心に深刻な影響を及ぼしているサツマイモ基腐病。焼酎業界においても大きな課題となっています。この問題に対して小鹿農業生産組合はどのような影響を受け、どのような対策を講じているのか、担当者に話を聞きました。






基腐病による生産への影響


小鹿農業生産組合によれば、基腐病が広がり始めた2018年以降、生産現場に大きな変化が起きたという。


「2018年頃から影響が目立ち、生産体制を見直す必要が出てきました。ただ、昨年は比較的状況が安定し、『ミチシズク』という品種の生産量がかなり増加しました。『コガネセンガン』も前半は非常に収量が良かったのですが、後半にかけて収穫量が落ちる傾向が見られました」と、小鹿農業生産組合の担当者は振り返った。


基腐病の影響で原料のサツマイモ価格は上昇傾向にある。「資材費や病害対策費などが増加しており、全体的な生産コストが上がっています。しかし昨年は収量が良好だったため、何とか利益は確保できました」と話す。


使用品種の変化と課題


これまで主力品種だった「コガネセンガン」の仕入れが難しくなり、小鹿農業生産組合では新しい品種への移行を進めている。


「最近導入した『ミチシズク』は基腐病への耐性が比較的強く収量も良いのですが、収穫のタイミングが遅れると傷みやすい難点があります。また、『ベニマサリ』などの品種も導入していますが、それぞれ味や香りに特徴があり、これまでとは微妙に違った焼酎の個性が出てきています」と担当者は語る。


「消費者の反応としては、特にネガティブな意見は出ていないですね。むしろ新しい品種に対する好意的な評価もあるので、その点は安心しています。ただ、やはり昔ながらの黄金千貫の味を求めるファンも多いので、バランスが難しいところです」と、市場の反応についても率直な意見を述べた。





農家との連携強化とサポート体制


基腐病の影響で、農家の廃業が進んでいるとの話も聞かれるが、取引状況の変化についてはどうか。


「廃業や品種転換する農家さんもいますが、病気だけが原因ではなく、後継者不足など複合的な要因があります。弊社としては契約農家向けに定期的な勉強会を開催したり、新しい品種や栽培方法に関する情報共有を積極的に行っています」と述べ、農家のサポートに努めている現状を説明した。


国や県からの助成制度についても、「基腐病対策の薬剤や資材購入に補助が出るなど、一定の効果はあります。ただ、実際には病気そのものの完全な抑制は難しく、病気と共存していくための持続可能な農業の仕組みづくりが求められています」と語った。


業界全体の動きと今後の展望


基腐病への対応は小鹿農業生産組合だけでなく、鹿児島県全体の焼酎業界にとっても喫緊の課題だ。


「メーカー間で情報共有は頻繁に行われていますが、今後も共同研究や情報共有をさらに強化し、地域全体として対応力を高めていく必要があります」と業界全体の取り組みについても説明してくれた。


基腐病の特性について、welzoの古賀氏は「最近の研究により、基腐病を引き起こす菌は、DNAマーカーを使った高度な技術を用いないとその存在を検出できないことが分かってきました。これまでの対策では病原菌を直接捉えることが難しかったため、新たなアプローチが求められています」と述べた。


今後の小鹿農業生産組合の取り組みについて、「弊社としては基腐病に強い品種の導入も検討しながら、農家の方々と共同で新しい栽培方法の開発にも力を入れていきたいと考えています。焼酎は鹿児島の文化そのものですから、消費者の皆さんにも理解を深めていただきながら、伝統を守り、次世代へつなげていきたい」と力強く語った。

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