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「品種を選ぶことが一番の対策になっている」サツマイモ農家・永山さん

鹿児島県鹿屋市で専業農家を営む永山さんは、18年ほど前に父親から家業を継ぎ、サツマイモの栽培を続けています。

芋焼酎の原料となる品種「コガネセンガン」を長年つくってきましたが、サツマイモ基腐病の影響によって状況が変わってきました。2023年の状況をうかがいました。


(取材時期:2023年9月下旬)



今年はコガネセンガンは作っていない


前回の永山さんへのインタビューは、2023年のシーズン前に行いました。永山さんはその際、「サツマイモ基腐病への対策手段」として、そもそもコガネセンガンの栽培をやめる予定だと話していました。


あらためて永山さんに2023年の作付状況をたずねたところ「予定通り、コガネセンガンは作っていません」との答えが返ってきました。今年栽培しているのは「シロユタカ」、「べにまさり」、「みちしずく」、「こないしん」、「べにはるか」といった品種とのこと。


「今年の前半は比較的天候は安定していたので、収穫量も好調です。ただし、10月以降に収穫予定のものについては悪天候の影響を受けてしまい、不調になりそうです。土壌の水捌けをよくする排水対策はやってきているので、台風や大雨の影響はそこまで大きくありません。それよりも、猛暑による高温が問題でした。高温多湿によって病原菌が活発になってしまい、軟腐病やツル割れ病などの病気が広がってしまったようです」(永山さん)


今年栽培している品種のうち「べにはるか」は苗の段階での生育がうまくいかず、作付面積を減らすことになってしまったとのこと。苗の生育が良かった「シロユタカ」を多く栽培していますが、こちらは軟腐病の被害が出てしまっているそうです。


対策のための経費が余分にかかり、助成制度も不十分な状況

サツマイモ基腐病に関して、今年はどんな取り組みを行っているのでしょうか。

「バイオ苗を使ったり、植え付け前の苗を消毒したり、殺菌剤を畑に撒いたりといった対策をしています。水捌けをよくすることが重要なので、排水対策はしっかり行っています。それから、例年以上に畑を耕すようにしました。収穫した直後から耕耘機を入れて、4,5回ほど耕しています。」(永山さん)


こうした対策を行うことにより、消毒薬や殺菌剤、機械を動かす燃料などのコストが余分にかかってきます。県や国などの支援や助成もあり、永山さんも助成制度を活用しています。そうした支援はありがたいとした上で、「今年の分はもう締め切ったので、来年また申請してください」と対応されることもあったと永山さんは言います。


基腐病で収穫量が減ることは、農家にとっては売上高の減少に直結します。減った収入のなかから対策のためのコストを追加支出するのは厳しく、その状況に対応するために支援策や助成制度があるはずですが、十分には活用できていない実態があるようです。



弱い品種を生産するのはリスクが高い

サツマイモ基腐病への感染しやすさは、サツマイモの品種によってはっきりと傾向があります。「コガネセンガン」や「べにはるか」は基腐病に弱く、強い品種としては「みちしずく」や「こないしん」があります。


「みちしずく」は焼酎・デンプンの原料として開発され、今年から次第に普及し始めた品種です。「コガネセンガン」に代わって焼酎の原料・デンプンに使われる予定ですが、それだけでなく、かりんとうの原料として使われる見込みもあるとのことです。


また、「こないしん」はたしかに病気に強いものの、ツルや茎が丈夫すぎるため収穫が大変になり、生産者には人気がないそうです。収穫量は見込めるものの、収穫時に余分な手間が掛かったり、強力な茎が処理できずに機械が故障してしまうリスクがあるとのこと。また、そうした手間に対して買取価格が高くないという問題もあります。


サツマイモ専業農家として、買取価格や生産コストが重要な指標となるのは当然のことです。基腐病で全滅してしまうリスクを考えると、コガネセンガンは怖くて作れないと永山さんは言います。


「農研機構の方も言っているように、苗や畑に病原菌がいなくて、畑の水捌けを良くすれば、サツマイモ基腐病はそれほど恐れる必要はありませんが、そのような環境を整えることは非常に困難で、特にコガネセンガンやべにはるかは、基腐病に感染し易いため、品種を選ぶことが何より重要な対策だと思います。」(永山さん)



「もしコガネセンガンを作るのなら、3月頃までに植え付けを済ませて、9月中旬には収穫を完了させる必要があります。栽培時期が遅くなるほど基腐病のリスクが高まるからです。しかし、9月に収穫が終わったら、10月以降は畑が遊んでいる状態になります。苗を作るハウスも同様です。畑やハウスが余っているのに栽培しないのはもったいないですよね。だからコガネセンガンを主軸にして生産計画を立てるのは難しいのです。」(永山さん)


買取価格が十分に高くなるなど、リスクを上回るメリットがなければ、今後は「コガネセンガン」や「べにはるか」を栽培するサツマイモ農家は減ってしまうのかもしれません。酒造メーカーにとっても厳しい状況がしばらく続きそうです。

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