2024年2月11日に鹿児島県で開催される「焼酎ツーリズムかごしま2024」は、鹿児島県いちき串木野市と日置市にある9つの焼酎蔵を巡回バスで周遊し、地域の焼酎文化を深く体験できるイベントです。
昨年2月に第1回が開催され、県内外から多くの観光客が訪れて焼酎を楽しみました。今年は翌日にアフターイベントを開催するなど、規模を拡大して鹿児島の芋焼酎の魅力を発信します。
このイベントの実行委員である小林史和さんに、焼酎ツーリズム開催の背景や見どころをお聞きしました。
――「焼酎ツーリズムかごしま」はどんなイベントですか?
南九州の風土が育んできた芋焼酎とその文化を、五感で体感することができるイベントです。鹿児島県西部の焼酎蔵を巡る周遊バスに乗って、焼酎の試飲や、焼酎づくりを行っている杜氏さんたちとの会話を楽しみながら、味や香りだけでなく地域の風土まで直接体感していただけます。
2023年に初めて開催し、今回が第2回になります。参加蔵数は前回の6蔵から増えて9蔵になりました。また、ツーリズムの翌日はスピンオフイベントとして、焼酎にまつわる事象を学べる「焼酎(そつ)のんごろカレッジ」も開催します。
――小林さんが「焼酎ツーリズム」を企画した背景をお聞かせください。
小林さん:もともと私は山梨県の出身で、2016年に地域おこし協力隊の制度を利用して移住してきました。山梨では「ワインツーリズムやまなし」が長年にわたって開催されています。ワインで盛り上がるのだから、焼酎でも似たイベントができるのではないかというアイディアをずっと温めていました。
直接のきっかけになったのは、2年ほど前に、とある酒造メーカーで働く若い方と出会ったこと。その方が「他の酒蔵で働いている同世代との交流がない」と言っていたのが気に掛かったのです。
そんな折に、鹿児島県酒造組合の「焼酎トレイル検討事業」に関わるチャンスがありました。山梨のワインツーリズムをお手本にしながら、焼酎づくりをする若い世代どうしの交流の場もつくりたいと考えました。
――前回の焼酎ツーリズムはどのような様子でしたか?
100名ほどの参加者が県内外から集まりました。およそ半数は鹿児島県内からですが、東京や神奈川からの参加者も多かったです。普段はまったく焼酎を飲まないという方も一定数いらっしゃいました。新しく焼酎と出会うきっかけを提供できていれば嬉しい限りです。
参加した焼酎蔵は、規模の大きなところも小さなところもあり、いろいろなタイプの蔵を見学いただけたのは好評でしたね。蔵での見学内容はそれぞれの蔵に考えてもらって、製造工程の見学や利き酒などを提供していただきました。
(前回開催時の様子)
――参加された方の反響はいかがでしたか?
ツーリズムに参加いただいた方からは、「杜氏さんたちとのコミュニケーションが楽しかった」「生産者の説明を直接聞けた」といった声が多くあがりました。蔵ごとの焼酎を飲み比べることで、あらためて焼酎の魅力に気付いたといってくださった方もいましたね。また、巡回バスがあるのでハンドルキーパーを立てずに気兼ねなく飲めて嬉しいという声もありました。
――地域や焼酎産業に対して、どんな効果を期待していますか?
昨年ツーリズムに参加した焼酎蔵の皆さんからは、ポジティブな反応をたくさんいただきました。お客さんたちと直接コミュニケーションを取れたことが焼酎づくりのモチベーションにつながったという声を多く聞きましたし、自分たちのつくっている焼酎の魅力を再認識する機会になったと話してくださった蔵元さんもいます。
第1回で参加いただいた焼酎蔵の方同士の交流も生まれていて、今回の見学企画を相談し合っているそうです。また、鹿児島大学農学部の学生さんたちが運営スタッフとして参加してくれたのですが、もしかしたら彼らにとっては就職先の候補になるかもしれません。「消費者にも造り手にもメリットのあるWin-Winのイベント」という目標を達成することができたと思います。
焼酎の消費量は2007年をピークにじわじわと低迷していて、コロナ禍によってその傾向はさらに進んでいます。このままいくと、焼酎づくりをやめてしまう蔵元も次第に増えていくのではないかと懸念しています。
(「焼酎ツーリズム」実行委員の小林さん)
私は焼酎が好きなんです。「好きだった蔵の焼酎が飲めなくなってしまった」というのは悲しいので、焼酎の魅力を再発見するような機会をつくって、すこしでも焼酎離れを食い止められたらという思いがあります。
――今年は「焼酎ツーリズム」の翌日に「焼酎(そつ)のんごろカレッジ」というスピンオフイベントも実施します。こちらの内容についても教えてください。
鹿児島国際大学の先生や、山梨でワインツーリズムを運営してきた方などに講演をしていただいたり、ツーリズムに参加した焼酎蔵のみなさんによるトークセッションを行います。トークセッションでは、2度の焼酎ツーリズムを通して焼酎蔵からの目線で感じたことや、鹿児島の焼酎産業の未来などについて語っていただく予定です。
サツマイモ基腐病の状況についても、SAVE THE SWEET POTATOさんに発表していただきます。サツマイモ基腐病については私も勉強不足でよくわかっていないところがありますし、基腐病について焼酎蔵の方と具体的に話すこともなかったので、この機会に勉強できたらと思っています。
1日目の焼酎ツーリズムでは蔵を回って楽しんでいただき、2日目のカレッジでさらに焼酎への理解を深め、頭もお腹も、心も一杯になってもらいたいと考えています。特に、地元のいちき串木野市や日置市の方など普段から焼酎に親しんでいる方にも参加してもらえたら嬉しいですね。
――今後、焼酎ツーリズムをどのように発展させていきたいと考えていますか?
このイベントを企画・運営して、あらためて鹿児島の焼酎文化の魅力を感じました。100年を超える歴史をもつ焼酎蔵もたくさんあります。その背景には、この地域の環境や資源があり、人々の営みがあるわけです。地域としての魅力を再発見して発信していくことで、この地域の経済的な発展にもつながるはずです。
今回の開催はまだ2回目です。今後も焼酎ツーリズムを続けていって10年が経つ頃には、消費者にとってのイメージや、生産者どうしの横の連携など、いろいろな課題もポジティブに変化していくきっかけとして貢献していければと思います。
<焼酎ツーリズムかごしま2024>
開催日:2024年2月11日(日) 9:00-17:00
参加費:8,000円 / 子供チケット 1,100円
(お湯割グラス、グラスサコッシュ、ガイドマップ、専用バスチケット引換券付)
当日受付場所:
JR鹿児島本線 伊集院駅南口・JR鹿児島本線 市来駅前公民館
参加焼酎蔵:
濵田酒造株式会社伝兵衛蔵・若松酒造株式会社・薩摩金山蔵(予約制)・大和桜酒造株式会社・有限会社白石酒造・田崎酒造株式会社・西酒造株式会社・小正醸造株式会社 日置蒸溜蔵・小正嘉之助蒸留所株式会社(予約制)
<焼酎(そつ)のんごろカレッジ>
開催日:2024年2月12日(月祝)10:00-17:00
参加費:無料 入退室自由
場 所:濵田酒造株式会社 伝兵衛蔵
詳細は公式ウェブページをご覧ください。
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