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焼酎から広がる「サツマイモ経済圏」 基腐病、酒離れを越えて世界と次世代へ

  • 執筆者の写真: R S
    R S
  • 2025年12月26日
  • 読了時間: 8分
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土壌伝染性の病害「サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)」の知見集積などを目的とした産学連携コンソーシアム「みんなのサツマイモを守るプロジェクト–Save The Sweet Potato–」(SSP)は今秋、次の世代へサツマイモをつなぐ取り組みとして、2023年に初開催した「イモマモフェス」を福岡市内で開きました。


ことしは、第1弾が焼酎編、第2弾がスイーツ編として2度の開催に渡り、それぞれ多彩なゲストを迎えてトークセッションを繰り広げました。今回は、第1弾の焼酎編の様子を紹介します。


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芋焼酎の伝統を守りながら、どのように世界へ、そして次の世代へと広げていくのか――。イモマモフェスの第1弾の焼酎編では、「サツマイモで酌み交わす、地域と未来」をテーマに掲げ、LINK SPIRITS代表の冨永咲氏、薩摩酒造福岡支店の小林泰樹氏、小鹿酒造営業部長の田中博文氏、飼料・農園芸資材商社「welzo」取締役でSSP代表の後藤基文の4人が登壇。フリーアナウンサーで「さつまいもアナウンサー」としても活動する鳥越佳那氏が司会を務め、「サツマイモ」と「焼酎」のいまとこれからに焦点を当てました。


「サツマイモ経済圏」の現状


司会・鳥越佳那氏(以下、鳥越氏) まず、いまのサツマイモと焼酎の状況から教えてください。


SSP代表・後藤基文(以下、後藤) サツマイモと聞けば、やはり薩摩=鹿児島です。農林水産省の統計でも鹿児島県は収穫量全国1位で、宮崎県と合わせると全国生産量のほぼ半分を占める年もあります。そして南九州のサツマイモは焼酎原料用が大きな割合を占めています。つまり、焼酎は地域のサツマイモ需要の中心にあるわけです。


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当日のトークセッションの様子


ところが2018年に鹿児島や沖縄で基腐病が確認され、根が腐る深刻な被害が出ました。対策が進んだ結果、10アール当たりの収量は発生前の水準に戻りつつありますが、作付面積は、農家の高齢化や離農で減り続けています。


一方で、酒類全体の消費量が2018年から2023年までに5ポイント減少したのに対し、本格焼酎は15ポイントも落ち込んでいます。生産では基腐病と作付減、消費では酒離れ・焼酎離れが進むなかで、サツマイモ経済圏を守る仕組みが必要だと考え、農家・企業・大学が手を組むSSPを立ち上げました。


焼酎業界にとってのサツマイモ


鳥越氏 そもそも焼酎業界にとってサツマイモとはどんな存在なのでしょう。


後藤 南九州ではサツマイモが地域の産業と文化を同時に生み出してきました。デンプンが体のエネルギー源になるのと同じように、サツマイモが南九州の焼酎業界でも雇用と文化を生み出すエネルギー源として、起点になってきたのではと考えています。


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welzo取締役でSSP代表の後藤基文


小鹿酒造・田中博文氏(以下、田中氏) 端的に言って、焼酎造りにとってサツマイモは「なくてはならないもの」です。鹿児島の焼酎文化は、サツマイモとともに成り立ってきたからです。


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小鹿酒造営業部長の田中博文氏


薩摩酒造・小林泰樹氏(以下、小林氏) 田中さんの言う通り、私たちにとってサツマイモは焼酎造りをするにあたって原料そのものになりますので、必要不可欠な存在です。


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薩摩酒造福岡支店の小林泰樹氏


LINK SPIRITS冨永咲氏(以下、冨永氏) 鹿児島出身としては“歴史そのもの”という感覚があります。東南アジアなど芋文化の地域を訪ねると、アジアの芋文化と鹿児島の歴史にルーツのつながりのようなものを感じることもあります。


イメージ変える新たな挑戦


鳥越氏 南九州のサツマイモの収穫状況はいかがですか。


後藤 農家さんの話を聞く限り、昨年も今年も比較的好調という声が多いです。代表品種のコガネセンガンに加え、新たに基腐病に強いミチシズクなどの品種も増えてきて、それぞれ特徴を生かした焼酎造りが進んでいます。


田中氏 コガネセンガンは昨年もよかったし、今年もよいと言われています。コガネセンガンはでん粉価が高く、甘みもあり、焼酎に向く芋として評価されてきました。


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南九州のサツマイモの収穫状況を説明する田中氏


鳥越氏 ところで、小鹿酒造さんが新商品を出されましたね。


田中氏 いまの市場はビールやワイン、ハイボール、クラフト蒸留酒など選択肢が増えました。そこで若い世代の入口にしたいと、鹿児島県産紅まさりを使った新しい芋焼酎「Bliss-Time」を開発しました。炭酸割りで香りが華やかになる商品です。


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小鹿酒造の「Bliss-Time」


鳥越氏 ボトルデザインもワインのようでおしゃれですね。


田中氏 “焼酎=おじさんのお酒”のイメージを変えたくて、20~30代社員を中心に企画しました。


鳥越氏 若い方に向けていろんな挑戦をされているということですが、それで言いますと、冨永さんも女性がときめくような焼酎を生み出されていますよね。


冨永氏 紫芋の天然色でピンク色の焼酎「NANAIRO-七色-」をつくっています。原料には基腐病に強いコナイシンを使いました。焼酎離れが進む中で、若い世代や海外の方が「思わず手に取りたくなる」きっかけをつくりたいと思って企画しました。


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LINK SPIRITSの「NANAIRO-七色-」


海外市場に「大きなのびしろ」


鳥越氏 海外での反応はいかがですか。


冨永氏 まだ焼酎はそもそも知られていないことが多いと思います。「韓国のソジュ?」と聞かれることもあります。ただ、ユネスコが昨年、日本酒や焼酎を含む伝統的酒造りを無形文化遺産に登録したことで、少しずつ注目が高まっていると感じます。


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LINK SPIRITS代表の冨永咲氏


輸出額は日本酒(清酒)が400億円を超える規模の一方、焼酎は16億円ほどと言われます。のびしろは大きいと思います。アジアは蒸留酒文化が根強く、相性の良さを感じますし、欧米では和食や発酵文化への関心が高まっていて、食とのペアリングで広がる余地は大きいです。


鹿児島はお茶の生産量も日本一になりました。海外で人気の抹茶と焼酎を組み合わせたコラボレーションにも可能性を感じています。


「香り系」「デジタル」で開拓を


鳥越氏 薩摩酒造さんも新たな取り組みを始められていますね。


小林氏 香り系芋焼酎「彩響(あやひびき)」を提案しています。清酒酵母を使った低温発酵で、青リンゴのような香りが特長です。炭酸割りにするとさらに香りが際立ちます。若い世代をはじめ、アルコールが苦手な人や焼酎を敬遠していた人にも飲んでいただきたいとの思いがあります。


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薩摩酒造の「彩響」


鳥越氏 実際に商品を知ってもらうためのアプローチはどのように取り組んでいますか。


小林氏 テレビCMだけでなく、YouTubeやTVerなど、若い世代がよく見る広告枠を活用しています。TVerはテレビより効率的に届く場面も増えていると考えます。


焼酎文化を観光を組み合わせる


鳥越氏 観光と結びつけた取り組みも進んでいますね。


後藤 南九州の焼酎文化をどう伝えていくかというテーマの中で、ツーリズムと連携した動きがあります。今日は「焼酎ツーリズムかごしま」を手がける小林史和さんも来てくださっています。ぜひ、一言いかがでしょうか。


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当日の会場の様子


焼酎ツーリズムかごしまの小林史和氏 ありがとうございます。「焼酎ツーリズムかごしま」というイベントを、鹿児島県の串木野市と日置市で3年前から開催しています。


複数の蔵を巡る専用バスを走らせ、参加者は地図と時刻表を見ながら好みの蔵と食事スポットを選びます。来年2月22日に4回目の開催を予定しています。


1日では回り切れないほど多くの蔵とコンテンツがあります。「焼酎が好きで移住した」立場から、焼酎と地域の魅力を一緒に伝えたいと思っています。


鳥越氏 焼酎と観光が結びつけば、地域活性化と文化継承の両方につながりますね。


生産現場の持続可能性を考える


鳥越氏 サツマイモの持続可能な生産のために、どのような課題がありますか。


後藤 まず担い手と労働負荷の課題があります。サツマイモは種芋から苗を伸ばし、何十万本も切って植えます。高設棚がない畑では腰をかがめて延々と苗切りを行うため、負担が大きい。スマート農業などで労働の質を変える必要があります。


もう一つは肥料です。日本の食料自給率はカロリーベースで38%前後ですが、窒素・リン・カリの原料はほぼ輸入に依存しています。海外から止まれば農業が成り立たない。だからこそ畜産堆肥など国内資源を活用し、地域内で資源を循環させる仕組みづくりが重要です。


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SSP代表の後藤


冨永氏 苗切りは本当に重労働です。人手を確保しづらいという声もあります。そこで「芋植え選手権」をイベント化し、若い人や都市部の参加者にも農作業を体験してもらっています。


田中氏 小鹿酒造では、製造の工程から出た焼酎かすを畑に戻して土づくりに生かす取り組みを続けています。すべてではありませんが、栄養分を含む副産物を堆肥などに活用して、土の力を取り戻すようにしています。


焼酎文化を次世代と世界につなぐ


鳥越氏 最後に今後挑戦したいことを聞かせてください。


冨永氏 焼酎を世界へ届けたいです。また、鹿児島は焼酎の蔵数が日本一ですが、じつはお茶の生産量も日本一になりました。海外では「抹茶」が非常に人気ですから、「抹茶×焼酎」のコラボレーションに可能性を感じています。抹茶スイーツとのペアリングや、抹茶を使った焼酎カクテルなど、新しい提案もしていきたいです。


小林氏 飲み方や味わい方の工夫を積極的に提案していきたいです。「彩響」のような香り系芋焼酎は、モヒート風のカクテルにアレンジしてもおいしいです。冷凍フルーツを使って自宅で楽しむなど、いままでの焼酎のイメージを超えた飲み方を提案していきたいですね。


田中氏 蔵見学や芋掘り体験を通じて若い人に産業の現場を見てもらい、将来の愛飲者を育てたい。適量を、長く楽しんでいただけるような焼酎文化を次世代につないでいきたいです。


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会場の一角では試飲会も開催された


後藤 国内では若い方をふくめて接点増やしていくことが重要と考えます。飲み方や「場」の提供だったり、焼酎ビジネス自体を新たにデザインできるようなことができるのではないかと考えています。


また、焼酎は食との組み合わせ次第で新しい世界がさらに広がっていくのでないでしょうか。日本の焼酎文化と世界のクリエイターが交わることで、ちょっとした「世界革命」が起きるのではないかというようなことも期待しています。


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トークセッションに続き、鳥越氏(中央)の進行で盛り上がった試飲会の様子



(構成・デザイン さつまいもニュースONLINE)

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