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土を豊かにすることが、地域を豊かにする――基腐病後の現場から見えてきた「さつまいも経済圏」の現在地

  • 4 時間前
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基腐病の流行以降、さつまいも農業は長く不安定な状態が続いてきた。「出るかもしれない」という前提で畑に立つ緊張感は、農家にとって大きな負担だった。


今回、小鹿農業生産組合の中馬亮太さんに話を聞く中で印象的だったのは、基腐病を「完全に克服した」と語るのではなく「向き合い方が変わってきた」と表現していた点だ。



「怖さ」は消えたわけではない。ただ、見え方が変わった


「正直に言えば、基腐病がなくなったわけではありません。ただ、以前のような“何をしてもダメかもしれない”という怖さは、かなり薄れてきました。」


理由として挙げられたのは、薬剤や品種の話ではなく、土壌の状態だった。


病気より先に見るべきものは「土の環境」


中馬さんが繰り返し口にしたのが、「水はけ」と「土の状態」だ。水が溜まり、嫌気状態になると、土はヘドロ化し、匂いが出て、病気が広がりやすくなる。一方で、水が抜け、菌のバランスが保たれた土では、問題が起きても広がりにくい。


「病気が出るかどうかより、その畑が“踏ん張れる状態かどうか”のほうが大事だと思っています」


土の変化は、数字より先に「感覚」に表れる


土壌改善の成果について尋ねると、返ってきたのは意外にも感覚的な答えだった。


「まず、匂いが違います。前はヘドロみたいな匂いがしていた土が、今はしません。」


土壌の色、感触、畑に立ったときの印象。そうした変化が積み重なり、「この畑は大丈夫だろう」と思える感覚につながっているという。


農薬を減らし、菌のバランスを見る


近年は、余分な農薬の使用を控え、光合成細菌やバイオ資材を使った土づくりを重視しているという。


「ゼロにしたわけではありませんが、 “とりあえず使う”ということはやめました。」


抑え込むより、整える。その考え方が、畑の安定につながっていると感じている。


収量は、短期の技術では戻らない


10年以上前、1反あたり4トン以上収穫できていた時代があった。現在は2トン取れれば良いとされる地域も多い。ただし、中馬さんはこうも話す。


「今でも4トン以上出している農家はいます。それは、ずっと土づくりを続けてきた人たちです。」


特別な技術があるわけではなく、毎年同じ工程を続けてきた結果だと中馬さんは言う。


芋だけを見ても、農業は続かない


話題は次第に、畑の外へと広がっていった。



「芋が良くならないと、焼酎は盛り上がらない。焼酎が元気じゃないと、農家も苦しくなります。」


さつまいも農家、焼酎蔵、米農家。どれか一つだけが良くても、全体は回らない。


「農業だけを切り出して考えても、 もう答えは出ない気がしています」と中馬さんは話してくれた。


かつては、良い結果ほど外に出さない風潮もあった。しかし現在は、取り組みや失敗も含めて共有する姿勢をとっている。


「芋が良くならないと、地域全体が沈む。だから、底上げできるならした方がいい。」

競争よりも、持続。その判断が、地域全体を見据えたものだと感じられた。


「やるべきことを、ちゃんとやる」

最後に、中馬さんはこうまとめた。


「特別なことはしていません。水はけを見て、土を整えて、工程を守る。それだけです。」


土を豊かにすることは、単なる技術論ではなく、農業と地域を同時に支えるための前提条件なのかもしれない。基腐病の先で、さつまいも農業は静かに次の段階へ進みつつある。


取材協力

小鹿農業生産組合 中馬亮太さん

株式会社welzo 古賀正治さん


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