「サツマイモがなくなってはいけない」——鹿児島とともに歩む三和物産
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鹿児島県鹿屋市で70年近くにわたり、さつまいもデンプンの製造や種苗生産などを手がけてきた三和物産株式会社。常務の和田彰氏に、さつまいも基腐病がもたらした影響と、産地を守るためにとった行動、そして今後の展望を聞いた。

「原料の原料」を支える存在
三和物産はデンプン製造やバイオ苗生産、造園・農業・エネルギー事業など多角的な事業を展開する三和物産グループの中核企業だ。大隅地域に根を張り、南九州の農業とともに歩んできた。
さつまいもから生産される「さつまいもデンプン」は、国内では鹿児島県でしか生産されていない。清涼飲料水の糖質原料や食品添加物の素材として広く使われており、和田氏は「原料の原料」と表現する。
「さつまいもデンプンは、完成品として消費者に届くものではありません。でも食品産業の中に確実に組み込まれている。国産の素材として、なくせない産業だと思っています」
かつては鹿児島県内に多くあったデンプン工場も、今では10社ほどにまで減少しているという。それでもデンプン産業には、さつまいも産地全体を支える役割がある。青果用にも焼酎用にも向かない規格外のさつまいもを引き受け、生産者にとってのセーフティーネットとしても機能してきた。

三和物産株式会社 常務 和田彰氏
基腐病が与えた二重の打撃
平成30年(2018年)に九州本土で確認されたさつまいも基腐病は、産地に深刻な打撃をもたらした。令和2年(2020年)には被害が最大規模に達し、原料収量だけで約3割減、苗の生産も半分以下に落ち込んだ。
三和物産も自社の農地で大きな被害を受けた。それまで順調に育っていた芋が、まとまった雨の後、わずか1,2週間でほとんど全滅の状態になった経験を和田氏は振り返る。
「畑の顔色が一気に変わった。腐っていない芋を選別して貯蔵しようとしても、すぐに腐り始めてしまう。あの時の状況は今でも記憶に残っています」
種苗販売への影響も大きかった。鹿児島・宮崎での蔓延を受けて、全国の農家から「鹿児島産の苗は受け入れられない」とキャンセルが相次いだ。バイオ苗として品質管理を徹底していたにもかかわらず、産地全体への不信が、生産者からの不買につながってしまった。

「それまで積み上げてきた鹿児島のさつまいもブランドが、一気に傷ついた。病気による実質的な被害以上に、ブランドイメージへの影響が打撃になったと感じています」
品種面での変化も顕著だった。コガネセンガン、べにはるか、シロユタカ、そしてデンプン用として優秀とされた「ダイチノユメ」が軒並み被害を受け、なかでも「ダイチノユメ」はその後の栽培現場からほぼ姿を消している。代わって、コナイシンやみちしずくが台頭し、品種の世代交代が一気に進んでいるという。
民間3社で取り組んだ蒸熱消毒
基腐病への対応として三和物産が注力したのが、種芋段階での蒸熱消毒の普及だ。
病気の原因となるカビ菌を不活性化するために、適切な温度と時間で熱処理する手法で、鹿児島県内でデンプン生産などを営む株式会社サナス、暖房機メーカーの三州産業株式会社とともに実証試験を重ねた。
種芋に熱を与えすぎれば発芽しなくなる。温度帯と処理時間の組み合わせを慎重に探りながら、各社が得意分野を持ち寄るかたちで適切な蒸熱消毒の条件を絞り込んでいった。この取り組みは後に、農研機構のプロジェクトとも連携し、現在では蒸熱消毒のマニュアルとして広く参照されるようになっている。
「健全な苗を届けることが、私たち種苗会社にできる最善策だという考えで動きました。私たちが苗を作り、本圃の土壌管理は生産者の皆さんが担う。そういう役割分担で、産地全体で基腐病に向き合おうとしていました」
生産者の「意識の変化」が回復を支えた
この数年で、さつまいもの収量は回復傾向にある。和田氏はその背景として、生産者の意識の変化を挙げた。バイオ苗への問い合わせが増えたことも、意識の変化の表れだと感じている。
「基腐病は発生するものだという前提で畑作りをするようになった。土壌の消毒や水はけの管理にコストをかけることを、皆さんが当たり前のこととして受け入れるようになったんだと思います」
一方で、生産コストが上がった分の収益確保は次の課題として残る。青果用さつまいもは価格が上昇傾向にあるが、焼酎用やデンプン用の買取価格への反映は追いついていない部分もあるという。
品種の世代交代と、苗会社としての役割
今後に向けては、新品種「コガネタイガン」への期待が高まっている。デンプン含有量が高く焼酎用途にも適するとされ、三和物産でも苗の供給に向けた準備を進めている。本格的な評価は令和9年(2027年)頃になる見通しだ。
生産者が必要とする時に、健全な苗をいち早く届けられることが種苗会社の価値だと和田氏は語る。品種開発そのものは大学や研究機関との連携に期待しつつ、三和物産としては「増やして届ける」役割に徹する。
「新しい品種が生まれても、必要な苗が現場に届かなければ意味がない。それが私たちの強みでもあり責任でもあります」
鹿児島から、世界へ
三和物産グループの企業理念は「地域社会の発展を牽引する企業であり続ける」というものだ。
「私たちは鹿屋という小さな地域の会社ですが、ここで作っているものは産業の根っこを支えています。新しい病気が出たときには、私たちがいろいろと試行錯誤をした結果を公開し、生産者が諦めなくても済むようにする。そういう存在でありたいですね」

株式会社welzo BIZ Promotion Division 取締役/SSP Project Leader 後藤基文
SSPのProject Leaderである後藤氏も「“サツマイモ”という言葉には“薩摩”が含まれている。鹿児島県でさつまいも産業に携わる一員として、サツマイモがなくなってはいけないし、その魅力を世界に向けて発信していきたい」と力強く語った。



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