生産者の思いを届ける——鹿児島特化の産地直送EC「かごしまぐるり」が目指すもの
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鹿児島県産の農産物・加工品を全国に届ける産地直送ECサイト「かごしまぐるり」を運営する大薗順士氏に、創業の経緯とサービスの現在、そして鹿児島の食の可能性について話を聞いた。

農業の魅力と課題、両方を見て育った
大薗氏は、南九州市(旧川辺町)の兼業農家の家庭で育った。地域の農業に触れながら、ものづくりの面白さと地域のつながりの豊かさを身近に感じてきた。
一方で、農業が抱える現実も早くから見えていたという。耕作放棄地の問題や、担い手の高齢化、そして「農業では十分な収入を得にくい」という構造的な課題だ。
前職では通信販売会社に勤め、商品販売やPRの実務を経験した。その過程で「生産者がものづくりに集中できる環境を、販売の側から作れないか」という考えが具体的になっていった。2021年に会社を退職して独立し、「かごしまぐるり」を立ち上げた。
3つの約束に込めた考え方
「かごしまぐるり」がコンセプトとして掲げているのが「鹿児島県産」「情熱」「安心安全」の3つだ。
鹿児島県産にこだわる理由は、まだ知られていない鹿児島の食の魅力を届けたいという思いから。前職時代に県外に出張するたび、鹿児島への関心の薄さを実感してきた。だからこそ、鹿児島に特化したサービスとして展開することに意味があると考えたという。また、食品を扱う以上、安心・安全であることは必須の要素だ。
「情熱」については、生産現場に足を運ぶたびに感じることがある。「生産者の方はそれぞれ強い思いを持って農産物を作っています。ただ、そのこだわりがなかなか消費者に届いていない。同じ商品でも、誰がどこでどんな思いで作ったかを知ることで、消費者の受け取り方は変わると思っています」と大薗氏は言う。生産者の熱量を「翻訳して届ける」ことが、自分たちの役割だと考えている。
地道な営業から始まったサービス
創業当初は、自宅の一室からスタートした。事業の最初のハードルとなったのは、サービス自体を理解してもらうことだった。ネット販売に対して懐疑的な農家も多く、一軒ずつ訪問しながら説明を重ねた。
出店する生産者の開拓には、テレビ・新聞・ラジオをこまめにチェックし、県内の農家に関するローカルニュースを見つけては訪問するという地道な方法を続けたという。参加した生産者の商品が実際に販売実績を上げることで、周囲の農家に口コミで広がっていき、連携先は少しずつ増えていった。
2022年11月に鹿児島の民間ファンドから支援を受けたことで、事務所を構えてスタッフを採用できるようになり、事業の規模が広がった。サービスの仕組みは創業時から基本的に変わっていないが、生産者からのフィードバックを受けながら継続的にアップデートしてきた。

株式会社オービジョン 代表取締役 大薗順士氏
基腐病の時期と、ECサイトとして向き合ったこと
「かごしまぐるり」はサービス開始当初からさつまいもを商品として取り扱っていたが、基腐病の影響で、さつまいもを出荷できない時期もあった。消費者からは「食べても大丈夫なのか」といった問い合わせも多く、産地のブランドへの影響を販売側として肌で感じた。
農家を訪ねると、複数年にわたる被害の重さが伝わってきた。「このまま農家を続けるのは難しいかもしれない、と話してくれた方もいました」と大薗氏は振り返る。「我々のサービスが全部解決できるわけではありませんが、売上だけでなく、ものづくりを続けることへの手応えを少しでも感じてもらえればと思いながらやっていました」
売れることで生産者が動き出す
サービスを通じて商品が売れるようになると、生産者の動きに変化が出てくる。「最初は半信半疑だった農家さんが、『次はこれも出したい』『新しいものを作ったので試してほしい』と言ってもらえるようになる。ユーザーの声をお伝えすることで、それがモチベーションにもなっている」
サイトを利用する顧客の7〜8割は鹿児島県外からだ。「鹿児島の食を外に出す」というコンセプトは当初から変わっていない。オンライン販売に加え、ポップアップストアや食育イベントなどのオフラインでの活動も組み合わせながら、鹿児島の生産者と県外の消費者をつなぐ機会を継続的に作っている。
連携しながら、それぞれの強みを活かす
「一社でできることには限界がある」と大薗氏は言う。「PRや販売は自分たちの強みですが、それ以外の部分は得意な人たちと連携していく方が、結果的に生産者の助けになると思っています」
鹿児島の食の可能性としては、観光との連携や加工品の充実を挙げる。素材の質は高いが、加工や料理としての展開はまだまだできることがあるはずという見方だ。
SSPとの連携についても、情報発信の多方向化やイベントへの参加など、それぞれのリーチを活かした取り組みを期待している。「同じ情報でも、いろいろな場所から届くことで、サツマイモや鹿児島に関心を持つ人の輪が広がっていくと思っています。鹿児島の食はまだまだ知られていない部分が多い。生産者の皆さんと一緒に、その可能性を広げていきたい」

株式会社welzo BIZ Promotion Division 取締役/SSP Project Leader 後藤基文
SSPのProject Leaderである後藤氏からも「サツマイモ経済圏の拡大など経済的な追い風を作る活動を進める中で、かごしまぐるりのような中心的な存在との連携に期待を寄せ、今後、具体的なコラボレーションを進めていきたい」との意向を表明しました。



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