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国内トップシェアを誇る鹿児島のサツマイモを襲う、サツマイモ基腐病

更新日:2023年5月17日

鹿児島県は本土面積のおよそ6割が火山灰などが堆積したシラスで覆われています。保水性が乏しくやせた土壌であることから農業生産性が低い一方、その特徴を活かして古くからサツマイモの生産が盛んに行われてきました。鹿児島県でのサツマイモ収穫量は、日本全体の約35%を占め、国内のトップシェアを誇ります。



サツマイモと並んで鹿児島県を代表する特産品の1つに焼酎があります。サツマイモを原料とした芋焼酎は全国的にも有名です。実際、県内で栽培されるサツマイモのおよそ5割は焼酎の原料として使われています。




そんな鹿児島県を中心に猛威を奮っているのが、サツマイモ基腐病です。サツマイモ基腐病は、ヒルガオ科の植物に影響を与える病気で、感染するとつるが枯れいもが腐る病状が特徴です。日本では2018年頃からその感染が確認されており、その後全国各地に汚染が広がっています。鹿児島県では最初期からその被害が報告されており、それ以降毎年収穫量が減少している状態です。


感染力が強く被害を食い止められない現状

農家さんに取材すると、その最初期からサツマイモ基腐病の影響を受けており、その被害が深刻なことが明らかになりました。細かな違いがありながら、被害の状況は共通する部分が見られます。


1つ目は殺菌剤が効かないこと。他の病気を発症した場合でも、殺菌剤の使用はもっともポピュラーな対処法です。多くの場合はそれ以上被害が広がりませんが、サツマイモ基腐病では有効な特効薬がいまだ開発されておらず、一度発症すると被害が一気に拡大してしまいます。サツマイモ基腐病に感染後、いずれの農家さんでも例年の半分以下にまで、収穫量が減少したということです。


2つ目は感染力が強いこと。土壌や水質、カメムシなど、媒介するさまざまな影響が考えられますが、いずれにしてもある畑で発症すると、次第に周囲の畑も汚染されていきます。耕うんで菌を地面深くに追いやったり、機械を都度洗ったりと、さまざまな対策を講じても被害が抑えられないのが現状です。病原菌を畑に残さないためには、出荷できない不用なイモである残渣を取り除く必要がありますが、相当な労力がかかり、現実的な手段とは言えません。


3つ目は有効な手立てが見つかっていないこと。農家さんがそれぞれに、殺菌剤の散布のほか、さまざまな対策に取り組んでいます。ですが、いずれも目立った効果が得られておらず、抜本的な解決には至っていません。サツマイモ基腐病に対する特効薬も開発されていないことも、影響が広がる要因となっているのです。


このように多くの農家さんでは、収穫量が減少することで収入が減りながらも、サツマイモ基腐病への対応に追われており、コストや労力がかかる状態が数年にわたって続いています。利益が少ない状態で負のスパイラルともいうべき状態で、サツマイモの生産を辞める農家さんも多くなってきています。





農家さんが試行錯誤の末に導き出した一時しのぎの対策

しかし農家さんに話を聞くと、抜本的な解決とまでは行かないものの、ある程度の効果が期待できる対策も導き出されています。


1つ目は土作りです。ある農家さんでは、有機栽培に取り組んだ畑のイモは、サツマイモ基腐病の発症が少なかったといいます。殺菌剤を散布したことで善玉菌も殺してしまい、かえって病原菌の繁殖を促してしまった、という見方もあります。微生物の活動を活発にし、病原菌に対抗しうる善玉菌を増やすことで、発症を抑えられる可能性があるのです。ただし、有機栽培には、従来以上に労力がかかり、広大な作付面積では対応しきれないのが現状です。


2つ目はバイオ苗の利用です。バイオ苗は無菌状態で生育された苗で、当然ながら病原菌を保菌していません。さらにバイオ苗を消毒することで、ある程度は感染が抑えられるといいます。しかし畑に病原菌が繁殖していれば、バイオ苗も効果を発揮できません。ある畑でははじめてサツマイモを作付けし、バイオ苗を使用したにもかかわらず、サツマイモ基腐病が発症してしまったというケースもあり、100%に近い効果は得られない状況といえます。


3つ目は病原菌に耐性のある品種の栽培です。サツマイモ基腐病は、焼き芋などでおなじみの紅はるかや焼酎の原料となるコガネセンガンなど、特定の品種では発症率が高い傾向にあります。一方でその他の品種では比較的発症が少ないのです。


しかし、コガネセンガンは長年芋焼酎の風味を築いてきた品種で、多くの焼酎酒造メーカーで好まれています。他の品種を扱うということは、愛されてきた風味を損ねかねないのです。実際、県内の多くの焼酎酒造メーカーで、コガネセンガンの不足による、販売価格の引き上げや販売休止などに陥っており、その被害は深刻です。


そうしたなか、病原菌に耐性のある品種をかけ合わせ、焼酎用に新たに開発された品種も登場しています。焼酎酒造メーカーでも試験が行われており、今後こうした品種を使った新たな銘柄を登場させるなど可能性を模索する必要があります。


有効な手立てがないいま各機関の連携が急がれる

残念ながら現時点では、サツマイモ基腐病に対して有効な特効薬が開発されていません。対策も不十分で試行錯誤が続くなか、農家さんにとっては苦しい事態が続いています。生活のためにこれまで育ててきたサツマイモの栽培を辞める農家さんも増えています。いま求められるのは、さまざまな機関や企業が連携し、一日も早くサツマイモ基腐病に対する抜本的な対策に取り組むことです。そうでなければ近い将来、私たちの食生活を揺るがしかねない事態に陥るかも知れません。

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