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生産者と消費者の「顔」をつなぐ——農業デザイン研究所が描くサツマイモ経済圏の未来ブランディングと情報流通の知見を、北関東から産地支援へ

35 分前
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農産物流通のコンサルティング業務を手掛ける株式会社シフラ(東京都江東区)が母体となって2025年に設立された、一般社団法人「農業デザイン研究所」がSSP(Save the SweetPotato)に参画する。生産者支援と産業振興を目的に活動を本格化させた同研究所の冨田氏に、設立の背景やサツマイモ産業への問題意識を聞いた。



農産物ブランディングの現場から——シフラ25年の歩み


株式会社シフラは1996年の設立以来、農産物・食品の流通とブランド開発を事業に据えてきた。町の花屋向けにインターネットを使った仕入れ・販売の仕組みを整えたところから始まり、その後、農産物のトレーサビリティなどにも事業領域を広げていった。


転機のひとつとなったのが、2002年にイトーヨーカドー向けに提供を開始したと立ち上げた「顔が見える食品。」シリーズだ。野菜を皮切りに、肉・魚・卵・加工食品と各分野に展開。生産者の名前と顔を商品に載せ、消費者との信頼関係を築くブランドとして定着した。その後も東急ストアなど複数の小売と連携し、食のブランディング事業を全国規模で積み重ねてきた。


「安全」より「安心」。生産者と消費者をつなぐ設計思想


「顔が見える食品。」が生まれた背景には、2000年代初頭の食品安全問題がある。大手乳業メーカーの問題や中国産野菜の残留農薬などの事例が相次いだ時期だ。「なにを買えば安全なのか」という消費者の問いに、小売がどう答えるかが問われていた。


冨田氏は当時をこう語る。「トレーサビリティが取れていますと伝えても、お客様には響かなかった。『私が作っているので安心してください』と言ったほうが買っていただける。“”安全”ではなくて“”安心”を売ろうという発想でした」。


もちろん、安心感を訴求するためには、安全性が担保されることが重要だ。各産地の栽培方法を確認し、生産履歴を管理する仕組みを整えた上で、生産者の顔と名前を消費者に届ける。それが「顔が見える食品。」だった。


シフラでは、東急ストアが展開する「手紙のついた野菜と果物」も手掛けている。野菜や果物などの商品についたQRコードをスキャンすると、生産者からの手紙をイメージしたWebページが表示され、消費者が返信を送ると農家からさらに返事が届く。


「美味しかったです、という声が届くと農家さんがものすごく喜んでくれる。見てもらえている、食べてもらえているという実感が、次の頑張りにつながります」と冨田氏は言う。


農業デザイン研究所の設立——産地支援を本格的に


こうした活動を長年続けてきたシフラが、2025年に一般社団法人「農業デザイン研究所」を設立した。後継者問題を抱える個人農家の相談対応、認証取得の支援、圃場や栽培技術に関するデータの記録・保存など、企業としての経済活動には直結しにくい産地支援を本格化させるための組織だという。


同研究所が活動の基盤として持つのが、20年以上の実績を通じて築いてきた7,500人以上の生産者データベースだ。全国各地の優れた生産者との長期的な関係から生まれた生産履歴や現場データが蓄積されており、これがブランドの品質を担保するベースとなっている。安全基準を満たしつつ、それぞれの農家が持つこだわりや栽培スタイルを個別に把握し、画一的な基準に押し込めない形でブランド化を進めることを志向しているという。


また、販売面では農業デザイン研究所の子会社として、農畜水産物農産物・青果を扱う株式会社KAOMIEと、加工品を扱う株式会社TUKURUを設立。情報の蓄積と発信、そして実際の販路確保までを一体的に手がける体制を整えつつある。企業のCSR活動にとどまるのではなく、経済的利益にまでつなげることが持続可能な農業には必要だ。


サツマイモ産業の構造と可能性——北関東の現場から


シフラの拠点は関東にある。千葉県などの北関東エリアは、サツマイモの一大生産地だ。

青果・加工それぞれの用途でサツマイモの価格形成は異なるが、生産者が値段を決めにくい構造が続いてきた。特定品種・特定用途への生産集中が進めば、産業全体の多様性や持続性が損なわれかねないという懸念も、現場に長く関わるなかで積み重なってきた課題だ。


一方で、可能性も見えてきた。シフラが埼玉の農業法人と取り組んだ事例では、「肌目が美しい」という特徴を発信したところ、想定以上の反応があったという。「こういう事例も作れるんだとちょっと驚きました」と冨田氏は話す。個々の農家が持つ独自のこだわりや強みをブランドとして打ち出していくことが、産業全体の価値向上にもつながっていく。


SSPとともに、九州と北関東をつなぐ


サツマイモは野菜の中でも品種の多様性が際立ち、青果・加工・焼酎・原料と用途も幅広い。嗜好品として消費者に受け入れられた数少ない野菜であり、ブランディングや情報発信が産業の価値向上に直結しやすい品目でもある。農業デザイン研究所がSSPへの参画を決めた理由のひとつも、そこにある。


「農作物のブランディングの仕事をしてきた会社はなかなか他にないと思うので、新しい視点で一緒にできることがあると思う」と冨田氏は言う。同研究所にとって、SSPへの参画は情報発信の本格的な第一歩でもある。


SSP Project Leaderの後藤氏も、今回の連携に期待を寄せている。北関東のサツマイモ産地との関係を広く持つ農業デザイン研究所との情報交換を行いながら、エリアを超えてサツマイモの食文化を発展させ、農家が継続的に農業を営める仕組みづくりを共に模索していきたいと話す。



現場知とブランディングの豊富な経験を持つ農業デザイン研究所との連携によって、これからどのような取り組みが広がるのか。サツマイモ経済圏をさらに豊かにしていくための新しい回路がSSPに加わった。

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